テニスを本気でやっていた時期に、俺はエーちゃんノートを実際に作っていた。対戦相手のサーブの弾み方、風向き、自分のミスのパターン——紙に書き出して分析する。
テニプリがファンタジーなら、ベイビーステップは俺が実際にやっていたことそのものだ。10年かけてリアルを追い続けた作品の最終回が、なぜあれほど「ひどい」と言われるのか。
ベイビーステップ最終回の内容——第455話で何が起きたのか
ベイビーステップは週刊少年マガジンで2007年46号から2017年48号まで、約10年にわたって連載された。全47巻・第455話で完結。累計発行部数は1,260万部を超えている。
2014年には第38回講談社漫画賞・少年部門を受賞した。アニメはNHK Eテレで1期(2014年)・2期(2015年)の全50話がぴえろ制作で放送されている。
漫画もアニメもU-NEXTで視聴できる。
最終話の舞台は慶稜チャレンジャー決勝。エーちゃんとクリシュナの試合が最終セットタイブレークに突入し、その真っ最中に「完」の文字が出る。試合の決着は描かれない。
エーちゃんは最後にこう確信する。「このままやり続ければ、きっと届く!」。ラストコマでは審判が「タイム!」とコールし、エーちゃんとクリシュナがベンチから立ち上がりコートへ向かう。
この「タイム!」はベイビーステップの世界では「プレーを再開してください」という意味だ。つまり「終わり」ではなく「続きへの始まり」。作品としてはそう読める構造になっている。
ベイビーステップ最終回が「ひどい」と言われる3つの理由
理由①——試合結果が分からないまま終わった
10年間エーちゃんの成長を追ってきた読者にとって、試合の勝敗すら分からない終わり方は衝撃だった。プロとしてのその後の活躍も、日常生活の描写もない。「で、どうなったの?」に対する答えが一切ない。
「最後まで読んだのに何も分からなかった」「結末がないのと同じ」という声は多い。俺も正直、ここは同意する。

試合結果が分からないまま終わるのはさすがに厳しい。10年追った読者の気持ちは分かる。
理由②——ライバルが一人も登場しなかった
難波江、神田、池——学生編で切磋琢磨したライバルたちが最終回に一切出てこない。物語の終わりを見届けるキャラクターが誰もいない。これは読者として純粋に寂しかった。

ライバルが最後に一人も出てこないのは寂しい。学生編の仲間にもう一度会いたかった。

プロ編で海外に移った時点で作品のコアが変わってしまった。国内ライバルとの接点が薄れたのは構造上の問題だ。
プロ編に入り舞台が海外に移ったことで、国内ライバルとの接点が自然に薄れた。物語の構造上仕方ないとはいえ、最終回にまで影響したのは痛い。
理由③——デビスカップが描かれなかった
作者・勝木光自身が「できればデ杯まで描きたかった」と語っている。デビスカップは日本代表として戦う舞台であり、ライバルが仲間になる展開が期待されていた。
読者も作者もたどり着きたかった場所が描かれなかった。これが「ひどい」という声の本質だ。作品が嫌いだから出る言葉ではない。好きだったからこそ、描いてほしかった未来があった。
打ち切りではない——作者・勝木光が語った真実
結論から言う。ベイビーステップは打ち切りではない。作者・勝木光がインタビューで「私の一存で終わらせてしまって申し訳なくもあります」と語っている。自らの判断で連載を終わらせた。
同じインタビューでは「できればデ杯まで描きたかった」とも明かされている。最終巻の後書きには「主に私の力不足で」という一文がある。
打ち切りではないが、完全に満足のいく形ではなかったことを作者自身が認めている。
「力不足」の正体——リアル型テニス漫画の限界
勝木光はテニス経験者であり、綿密な取材をベースに10年間描き続けた。学生編まではそのリアリティが最大の武器だった。しかしプロ編・海外戦に入ると状況が変わる。
世界トップ選手の内情をリアルに描くための取材は、学生テニスとは難易度が桁違いだ。「リアリティを追求してきた」からこそ、リアルに描けない世界が出てきた。これが「力不足」という言葉の本当の意味だ。
俺はこれを「リアル型テニス漫画の限界」と呼んでいる。テニプリはファンタジー型だから、海外編でもスケールを上げるだけで成立する。だがベイビーステップはリアル型だ。リアルを武器にした漫画が、描けない領域に正直に向き合った結果があの終わり方だった。
テニス経験者から見たベイビーステップのリアルさ
エーちゃんノートを俺は本当に作っていた
テニスを本気でやっていた時期、俺は対戦相手の癖やサーブの弾み方、自分のミスのパターンを紙に書き出して分析していた。エーちゃんがやっていた「データテニス」そのものだ。
あれは漫画の誇張ではない。テニスを本気でやれば、自然とたどり着く方法論だ。エーちゃんのノートを初めて見たとき「これ、俺がやってたことだ」と思った。
始めるのが遅かったからこそ分かるリアルさ
俺がテニスを始めたのは遅かった。不登校の後、初めて自分から始めたスポーツがテニスだった。学校外のスクールで4年間本気でやり、関西大会出場まで行った。
だからこそ「テニスをやっていない人向けのファンタジー型」と「やっている人向けのリアル型」の違いが体で分かる。ベイビーステップは後者の最高峰だった。

テニプリは娯楽、ベイビーステップは教科書。テニスをやっている人間ならこの違いが体で分かる。

海外プロ編でリアリティが薄れると、読んでいて感覚が変わりますよね。

「リアル」を武器にした漫画が正直に判断した結果があの終わり方だった。描けないものを無理に描かなかった誠実さは認める。
よくある質問(FAQ)
まとめ——「ひどい」ではなく「もったいない」
ひどいと感じた3点——試合途中での「完」、ライバルの不在、デビスカップが描かれなかったこと——はすべて事実だ。ただし正確な言葉は「ひどい」より「もったいない」に近い。あれだけの作品が、あの形で終わるのは惜しかった。
打ち切りではなく、作者・勝木光が自らの判断で終わらせた。「主に私の力不足で」という言葉は、リアルを追い求めた漫画家の誠実な判断だった。描けないものを無理に描かなかった。それは正直さだ。
テニスをやっていた人間として言う。エーちゃんのデータテニスは実際に機能する。累計1,260万部・講談社漫画賞受賞——この作品は本物だった。だから惜しかった。
ベイビーステップの漫画全47巻とアニメ全50話はU-NEXTで配信中だ。31日間の無料トライアルで観られる。学生編28巻までは少年漫画史に残るレベルの作品だ。まだ読んでいないなら、一度触れてみてほしい。



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